『WE ARE LITTLE ZOMBIES』のこと

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『WE ARE LITTLE ZOMBIES』という映画を観に行った。それぞれの理由で両親と死別した少年少女たちが、火葬場で出会いバンドを結成するという、すごく簡単に言えば「スタンド・バイ・ミー的な」映画だ。最初は邦画にありがちな「冴えない/斜に構えた俺らの青春サクセスストーリー」的な話なのかと思っていたのだけれどそんなことはなくて、どちらかというと終始鬱屈していた。

 今から感想文を書くのだけれど、この感想文は一切のネタバレなどに配慮していないのでまだ観ていない人は自衛してください。

 最初に観たときに思ったのは「邦画的な邦画だな」ということだった。これはどちらかというと演出の話だ。個人的な感想だけれど、なぜか邦画には、洋画と比べて登場人物の妄想シーンがギャグとして出てくる割合が高いように感じる。その場から地続きで妄想が始まって、登場人物がおかしな言動をして初めて「おかしいぞ」ということが観客にもわかり、そこで周囲の登場人物や主人公自身からのツッコミが入って現実に戻る、みたいなシーンが凄く多い気がする。サンプルが偏っている自覚はあるのだけれど。『WE ARE LITTLE ZOMBIES』にも、そういうシーンが盛りだくさんだった。ちょっとハズしたギャグって言うんだろうか。独特の間があった。

 最後まで観て思ったのは「これは何映画なんだろう」ということだった。ボーイミーツガールではない。青春映画ではない。サクセスストーリーでもない。展開は終始鬱屈としていて、バンドが解散するに至る事件の顛末には社会風刺っぽい一面もあるけれど「よし、現代社会に毒を吐いてやるぞ!」という気概も感じない。なので『WE ARE LITTLE ZOMBIES』をなるたけ短く説明しようとすると、最初に言った「それぞれの理由で両親と死別した少年少女たちが、火葬場で出会いバンドを結成するという、すごく簡単に言えば『スタンド・バイ・ミー的な』映画だ」ということになる。個人的にはこういうタイプの映画はあまり観ないのだけれど、たまーに映画館に行って観る分にはいいかもしれないな、と思った。観るのに身構える必要もないし、観終わったあとげっそりと疲れてしまうこともない。とっても「ちょうどいい」映画だ。

 唯一特筆すべき点があるとすれば、主人公たちが結成したバンド「LITTLE ZOMBIES」がレトロゲームの音源を使用して曲を作っており、代表曲がとってもチップチューンっぽいことだろうか。レトロゲームに造詣が深くないくせにドット絵とチップチューンが大好きな私には、映画全編を通してドット絵とピコピコ音が演出の要を握ってくれるのはとても嬉しかった。

 映画館で邦画を観たのは久々だけれど「たまにはこういうのもいいかな」と思わせてくれる映画だったと思う。